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PTSDでTPD請求はできますか?

結論(要点)

可能な場合があります。PTSD(心的外傷後ストレス障害)があっても、判断は診断名だけで決まりません。保険約款の定義に照らして、長期的に見て就労が現実的かつ継続的に可能かどうかが重要です。

一時的に調子のよい日があること自体は、直ちに請求不適格を意味しません。審査では、日単位ではなく週・月単位での安定性と持続性が見られます。

PTSDに関連するTPD請求の機能シグナル図
このビジュアルは、本ページで扱う主要論点――持続的な機能制限、治療経過、就労試行の文脈、実務証拠、記録の整合性、そして約款定義に沿った評価の進み方――を同じ構造で示しています。

審査で重視されやすいポイント

any occupation と own occupation の違い

any occupationでは、「別の軽い職務なら可能ではないか」と問われることがあります。ここでは、想定される代替職が実際にはなぜ持続不能なのかを、トリガー、疲弊、回復時間、出勤不安定性など具体的事実で示すことが重要です。

own occupationでは、元の職務の中核業務を継続的に遂行できるかが中心です。短期間の配慮付き勤務は、長期就労能力の立証としては不十分なことがあります。

実務上、強い証拠パッケージとは

「PTSDなので働けない」という抽象表現のみでは弱くなりがちです。どの業務刺激で悪化するか、悪化後どれだけ回復を要するか、なぜ就労が持続しないかを具体化することが重要です。

よくある遅延・不承認リスク

提出前チェックリスト

  1. 約款上の判定基準を確認する
  2. 元職の実際の業務要求を分解する
  3. 制限を業務要求に対応づける
  4. 治療・症状の時系列を整える
  5. 復職試行の証拠を補強する
  6. 全資料の整合性監査を行う
  7. 追加照会への回答方針を事前に決める

30日で進める証拠強化プラン(実務)

資料が「あるのに通りにくい」と感じる場合、1か月の整理で説得力が大きく変わることがあります。第1週は時系列の固定です。初期症状、悪化ポイント、治療節目、復職試行、最終離職までを一つの年表に統合し、診断書・申告書・補足資料の記載を揃えます。第2週は職務要求の分解です。元職の実務負荷(対人、速度、判断、トリガー暴露、安全責任)を具体化し、現在の制限と1対1で対応づけます。

第3週は主治医説明の質を上げます。診断名中心ではなく、頻度・強度・誘因・回復時間・就労持続性の観点で記載してもらうと、約款適合性が明確になります。第4週は整合性監査です。労災、所得補償、Centrelinkなど他制度資料と見比べ、核心事実を一致させます。制度差による表現の違いがある場合は、理由を先に説明しておくことが重要です。

この準備で結果が保証されるわけではありませんが、不要な照会や説明の往復、記載のズレによる信用争点を減らしやすくなります。

「働こうとした記録」を不利にしない残し方

「少しでも働いたら不利になるのでは」と不安になる方は多いですが、実際には記録の取り方が重要です。復職・試行就労は、努力したうえで持続不能だった事実を示す材料になり得ます。日付、勤務時間、業務内容、配慮内容、誘因、症状悪化、回復に要した時間を、評価語ではなく事実で残してください。

また、単発の遂行可能性と継続就労可能性を区別して示すことが有効です。自宅で短時間の作業は可能でも、締切負荷、電話対応、対人緊張、通勤再開で急速に破綻するなら、その違いこそが審査の核心です。審査側が見ているのは「時々できるか」ではなく「安定して続くか」です。

追加資料後に90日以上停滞したときの立て直し方

PTSD案件では、いきなり不承認になるより「追加提出→待機→再照会」のループで止まることが少なくありません。90日以上実質的な進展がない場合は、資料を増やすより先に、回答方法を“論点別”に切り替えるのが有効です。審査側の主要論点(軽作業は可能ではないか、復職試行は就労可能性を示すのではないか、症状変動があるなら長期制限とは言えないのではないか)を明示し、各論点に証拠と約款要件を1対1で対応させます。

実務では、各論点を「事実」「根拠資料」「約款上の意味」の3層で書くと読み手の判断負荷が下がります。資料量ではなく、審査がどの順で結論に到達できるかを設計することが、停滞脱出の鍵になります。

「軽い事務ならできるのでは」と言われたときの整理

PTSD請求で非常によく出るのが、「元の仕事は無理でも、もっと軽いオフィスワークならできるのではないか」という見方です。しかしこの推論は、PTSDによる制限が体力だけで決まるわけではないことを見落としがちです。実際には、トリガー暴露、継続的な集中、対人応対、期限プレッシャー、予期せぬ変更、そして症状悪化後の回復コストが重なって、就労の持続可能性を崩していることが少なくありません。

有効なのは、単に「事務もできません」と言うことではなく、想定される代替職の中身を分解することです。軽い事務職であっても、定時出勤、電話やメール対応、急な依頼の切り替え、上司や同僚との継続的接触、オープンオフィス環境、通勤、業務速度の維持が求められます。PTSDのある方では、こうした要求が過覚醒、回避、睡眠障害後の疲弊、感情調整困難、トリガー後の回復遅延を積み上げ、結果として就労の継続を壊すことがあります。

主治医、心理士、本人陳述の3つが同じ論理でつながると強くなります。つまり、どの業務要求が症状を引き起こすのか、症状が出た後にどれだけ回復時間を要するのか、それが出勤安定性、集中、速度、判断、安全性をどう崩すのかを具体的に示すことです。論点を「理論上できるか」から「現実に続くか」へ戻すことが重要です。

「症状が安定」=「安定就労可能」と誤読されないために

診療録に「前回より安定」と書かれると、就労可能性まで改善したと受け取られることがあります。しかし臨床上の安定は、急性悪化が減ったという意味にとどまり、職務遂行の持続可能性とは別概念です。主治医意見書では、この二つを明確に分けて記載してもらうことが重要です。

例えば「治療反応は得られているが、対人負荷・時間制約・トリガー曝露下では機能低下と回復遅延が反復し、一般労働市場での継続就労は現実的でない」といった形です。ここを明確化すると、審査の焦点が診断名から機能評価へ戻ります。

雇用主資料を“意見”ではなく“事実証拠”にする方法

「体調が悪く継続困難だった」という記載だけでは、審査上は抽象的になりがちです。雇用主資料は、①実際の業務要求、②実施した配慮、③配慮後も維持できなかった具体場面、④日付入り経過、の4層で整理すると証拠価値が上がります。

たとえば、どの勤務帯で欠勤が連続したか、どの業務で症状が増悪したか、どの支援を入れても生産性や安全性が維持できなかったかを具体化します。運用実態に近い記録ほど、PTSD症状と就労不能の因果関係を示しやすくなります。

提出前に、主治医意見書をどう整えるか

PTSD請求では、医療的な支持があっても、意見書が臨床経過の説明だけで終わっていると審査に十分つながらないことがあります。使いやすい意見書は、少なくとも4点を明示します。第一に主症状と誘因、第二にそれが出勤、作業速度、集中、対人対応、判断、安全にどう影響するか、第三に適切な治療後もなぜ制限が残るのか、第四に想定される代替職でもなぜ持続不能なのか、です。

「症状は安定しているが就労は勧めない」とだけ書かれていると、審査側はなお多くの補足を求めることがあります。これに対し、週あたりの発作頻度、トリガー後の回復時間、電話対応、対人緊張、時間制約、通勤、オープンオフィス環境での具体的な機能低下が記載されていれば、短期的な気分変動ではなく、現実の就労可能性を左右する持続的制限として理解されやすくなります。

提出前には、約款定義、元職の要求、失敗した復職試行、現在の争点を簡潔に整理して主治医へ共有すると有効です。法律判断を依頼するのではなく、就労能力評価に近い言葉で実情を表現してもらうための準備です。

FAQ

調子の良い日があっても請求できますか?

可能性はあります。判断は単発の状態ではなく、就労の継続性と再現性で行われます。

PTSDの診断だけで十分ですか?

通常は不十分です。機能制限、予後、約款要件への適合を示す具体的証拠が必要です。

復職に失敗した履歴は不利ですか?

記録が適切なら、持続就労が困難である事実を示す材料になります。

他制度(労災・所得補償等)との違いは問題ですか?

制度ごとに判定基準が異なるのは一般的です。差異の理由を明確に説明し、基礎事実を一貫させることが重要です。

主治医が「症状は安定」と書くと、働けると扱われますか?

そのリスクはあります。だからこそ、臨床的な安定と、就労機能の持続可能性が別であることを意見書で明確にしてもらうことが大切です。

心理療法や段階的な暴露訓練は、就労回復の証拠として使われますか?

必ずしもそうではありません。治療参加と安定就労は別問題です。治療環境と実際の職場環境の違いを丁寧に示すことで、誤読を防ぎやすくなります。

重要:本ページは一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。結果は約款、証拠、個別事情により異なります。

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